Kira McSpiceから、声と楽器の役割を聴く
Kira McSpice「Dark Waters (ft. Midwife)」を、歌っている人の名前から聴いてみたい。Kiraは歌、チェロ、ギターを演奏し、自分の作品を制作する音楽家。この曲では、別の音楽家Midwifeが歌だけでなくシンセも担当している。公式クレジットには、二人の声と楽器の分担が並ぶ。
きっかけは、音楽媒体Foxy Digitalisの主筆・編集長Brad Roseによる2026年4月10日のインタビュー。Bradは収録アルバム『Saturnism』について、複雑な編曲の中でもKiraの声が中心にあると評価している。今回はその着眼点から、声や楽器にどんな仕事をさせているのか、制作の説明を手がかりに客演のつながりと、本人が語る影響をたどる。
本号の入口
Kira McSpice feat. MidwifeDark Waters / Saturnism
曲の先行公開は2026年2月13日、アルバムは2月27日。歌とシンセで参加するMidwifeにも耳を向けたい。
Kiraは同じインタビューで、「Dark Waters」を書いたとき、コーラスにMidwifeの声を思い描いて参加を依頼したと話す。先に欲しい声があり、その声を持つ人に一緒に作ってもらう。客演者の名前を知ってから再生すると、二人の声が曲のどこで重なるかに関心を向けられそうだ。
同じアルバムの「To Hold You」には、映像監督Will Ponturoによるミュージックビデオもある。Bradのインタビューで紹介された映像から、歌の世界にもう一度入ってみる。
楽器を、物語の登場人物にする
『Saturnism』から一作前へ戻ると、Kiraの『The Compartmentalization of Decay』には、楽器の名前を配役表のように読む楽しみがある。2024年のこの作品も、録音・ミックス・共同制作はTyler Skoglund。新作にも参加する音楽家・録音制作者だ。
作品のクレジットでは、歌が語り手、Kiraのチェロがカエデの木、Tylerのシンセが赤い空を担う。楽器を単なる伴奏として列挙せず、物語の役割と組み合わせている点が、この前作を続けて聴く理由だ。歌以外の音を、別の登場人物として追うと曲の見え方は変わるだろうか。
同じ共同制作者との前作
Kira McSpiceThe Compartmentalization of Decay
2024年4月12日。声や楽器に物語の役を割り当てたクレジットとともに聴く。
Kira自身が選ぶ、声の手本
声をどう使うようになったのかは、別の聞き手との対話から分かる。Kate Crudgingtonが音楽媒体Get In Her Earsで担当する「Five Favourites」(2024年5月)は、音楽家本人に制作へ影響した曲を選んでもらう企画。Kiraはその一曲に、歌手・作曲家Kate Bushの「Hello Earth」を挙げている。
Kiraは、Kate Bushとの出会いによって、高い声域や風変わりな歌い方を自分に許せるようになったと語る。Bradが完成した編曲の中で声の存在を評価するのに対し、こちらではその声を選ぶまでの影響が本人の言葉から見える。単に同じ歌手を好むという話より、歌い方の選択に関わるつながりだ。
Kate Bush「Hello Earth」を聴く / YouTube公式配信
客演の声から、Midwife自身の制作へ
MidwifeはMadeline Johnstonの音楽名義。『Saturnism』の公式説明にも、その対応が記されている。次は彼女が録音・ミックスまで担った『No Depression in Heaven』へ。
公式の作品紹介によると、2024年のこのアルバムは主にツアー中の車内で書かれた。「Dark Waters」で他の作者の曲に加わる仕事と、自分で録音を仕上げる仕事を続けて聴けるので選んだ。Kiraに似ていると決めて探すのではなく、気になった声の持ち主の作品へ進む道だ。
客演者自身の作品
MidwifeNo Depression in Heaven
2024年9月6日。Madeline Johnston本人が録音・ミックスも担当するアルバム。
アルバム収録曲「Killdozer」は、発売元The Flenserが案内する映像からも聴ける。
「Killdozer」の映像をYouTubeで見る。この映像はページ内再生に対応しないため、YouTubeへ移動します。
静かな音を、どこから聴くか
Midwifeの静けさを、二人の書き手は違う角度から捉えている。メタルとその周辺をnoteで紹介するmeshupecialは、2024年の年間選で、静かなギターと囁き声に、癒しだけでは収まらない重さを見いだす。heaven metalというMidwifeの自称と、一般的なメタルの音との距離に注目した読み方だ。
一方、noteで音楽レビューを書くKt.Fmkは、2024年後半の発売予定を挙げた記事で、Midwifeを抑制されたドリームポップとして捉える。単調にも受け取れるが、気分に合う場面では届きそうだという、期待と留保を伴う紹介だ。これは完成盤の評価を断定した文章ではない。同じ静けさから、一方は重さを、もう一方は聴く状況への依存を考えている。その違いを手がかりに、『No Depression in Heaven』へ戻ってみたい。
継続して読むなら、meshupecialの2023年選とKt.Fmkの記事一覧へ。前者はメタルと隣接する音楽まで、後者は新譜への期待と作品ごとの評価を追える。分類は同じ作品を見る角度を変える道具になり、二人が同じ結論を出している必要はない。
寄り道:一つの楽器から電子音を組み立てる
別の制作法にも触れたければ、Kristina Warren『Tusk』を。Warrenは電子音や映像も作る音楽家で、コンサーティーナは蛇腹を押し引きして鳴らす楽器だ。Bradによる対話では、その楽器から連想される音楽と、本人が演奏して感じる可能性の隔たりを電子処理でつなぐと話している。
KiraからMidwifeへは実際の客演をたどったが、こちらは声と楽器の役割を考えるための比較。Kiraとの交流や影響関係を確認したものではない。
Bradの別のインタビューから
Kristina WarrenTusk
2026年3月20日。コンサーティーナ、電子処理、映像を扱う4曲。歌ものから楽器の演奏へ比較を広げる。
さらに探すなら、Kiraの作品ページに付くart pop / dark folkが検索の手がかりになる。ここで並べた全作品を一括する分類ではなく、Kiraの周囲から次を探すための語だ。楽器と映像の組み合わせが気になったら、『Tusk』の紹介にあるaudiovisual concertina(映像とコンサーティーナ)でも探してみたい。
Bradを続けて読むなら、まずは今回の二つのインタビューへ。声がどう残るかという評価と、楽器の可能性を本人に尋ねる質問。その両方を読むと、作品だけでなく、彼が何を確かめようとしているのかも追える。著者紹介と記事一覧には、音楽制作も行う書き手としてのプロフィールがある。
初稿:2026年9月12日。追記確認:2026年9月27日。新旧の作品と、2026年4月の二つのインタビューをたどる記事です。AIによる調査・編集。音への評価は紹介者に、制作の説明は本人・公式クレジットに帰属しています。独自の試聴体験は記していません。
改稿:Kira本人の影響説明とMidwifeを扱う二人の書き手を追加。Kristina Warrenは制作法を比べる寄り道として整理。