Dreamcoreの「あの曲」は、どこから来たのか
夢のような場所、見覚えがあるのにどこか不自然な風景。Dreamcore(ドリームコア)は、そうした画像や映像をめぐる呼び名として使われ、音楽を選ぶ言葉にもなっている。その名のプレイリストには、歌のない電子音楽も、ゲームのサウンドトラックも、声を重ねたポップスも入っている。
今回確認したAmazon Musicの公開リストと別の公開リスト、Spotifyの利用者による選曲では、Instupendo「Comfort Chain」、Toby Fox「Fallen Down」、Molina「Hey Kids」の名前が、それぞれ複数のリストに現れる。
この曲たちは、作られたときにはどんな作品だったのだろう。作者は何を考え、いまは何を作っているのか。今回は、制作当時の言葉や元の収録作までたどれる三人を選んだ。Dreamcoreのイメージに合う音を探すところから、一曲ずつ、その人の仕事へ戻ってみたい。
Instupendo — 「Comfort Chain」を作った理由
「Comfort Chain」を、後から別の言葉で聴き直した人がいる。Public Pressureの書き手Alex Mazeyは、以前この曲をLoFiのプレイリストに入れながら、好きなのにそこには収まらないと感じていた。2024年の対話記事では、後にDreamcoreの映像表現に出会い、曲に合う世界が現れたように感じたと振り返っている。
これは聴く側の経験だ。では、作った側は何を考えていたのか。
Instupendoは電子音楽を制作する音楽家。「Comfort Chain」を公開した2017年、まだ高校生だった本人は、ELEVATORの取材で、聴く人に安らぎを感じてほしい、それがこの曲を作った理由だと話している。「Comfort Chain」のcomfortは、本人が言葉にした制作の狙いでもある。
同年のLucas Fosterによるインタビューには、寮での制作生活も出てくる。本人は、旋律を数多く作って、その中から残すものを選ぶと説明する。当時ambientやindie-electronicと呼ばれていた自分の音楽についても、一つの音に留まるつもりはないと答えている。
その後を聴くなら、2025年のInstupendoと制作集団Ripsquadの共作『Ripstupendo』へ進みたい。The FADERのJordan Darvilleによる本人インタビューでは、作った音を何度も素材に戻して組み直す工程や、制作中の会話を歌詞へ取り込み、歌を録りながら書く方法が語られている。これはアルバム全体の制作の話。その一曲として「Human Nature」を聴ける。
公式クレジットにある歌詞とボーカルの担当もInstupendoだ。「Comfort Chain」で知った人が、今度はどんなふうに歌を組み立てているのか。
Toby Fox — 「Fallen Down」はゲームの前にもあった
Dreamcoreの選曲からToby Fox「Fallen Down」へたどり着くと、まず『UNDERTALE』の音楽に出会う。Toby Foxは、このゲームの作者であり、音楽も手がけた人だ。以下は2015年のサウンドトラックに収録された版。
ところが、この曲の来歴はそこからさらに遡れる。2012年の『I Miss You – EarthBound 2012』には、すでにToby Fox名義の「Fallen Down」が入っている。ゲーム『MOTHER』シリーズの音楽を愛する複数の作者が、ゲームの音色を使って曲を作った企画だ。ここでの一曲が、後に別のゲームのサウンドトラックにも収まる。
2012年の「Fallen Down」を、企画の公開ページで聴く
Julian Feeldが行った2015年のToby Foxへの取材(保存版)でも、本人は「Fallen Down」を別の企画から取り込んだ曲の一つに挙げている。また、ほとんどの曲を担当する場面のプログラムより先に作った、と説明する。音楽があることで、場面をどう進めるか考えやすくなるからだという。
曲が新しい場所で働き始めるという話は、近年の制作にも続いている。2025年発売の『DELTARUNE Chapters 3+4 OST』に入る「TV WORLD」について、Tobyは公式の制作回顧で、2015年に作った案と、2018年に試した別案の話をしている。友人の反応を聞いて元の案へ戻り、発売に向けて手を入れたという。
Toby Fox「TV WORLD」を公式Bandcampで聴く
その回顧ページには、別案の未完成音源「TV Land (WIP)」も置かれている。完成曲と、その手前で選ばれなかった案を聴ける場所だ。
Molina — 「Hey Kids」の声から、自宅の録音へ
三人目は、シンガーソングライターのMolina。2018年の「Hey Kids」は、Dreamcoreの選曲で見つかる歌のある曲だ。公式ページへ戻ると、共作者であり、二番から歌に加わるLate Verlaneの名前も見える。
この曲を、声の作り方から尋ねたのが、音楽ニュースレターTone GlowのJoshua Minsoo Kimだ。2024年の長いインタビューで「Hey Kids」に触れて当時の制作を聞くと、Molinaは声の旋律の強弱や対比、声同士が応答するような組み合わせを探っていたと答える。
同じ取材で話す、後年の「The Road from Here」の作り方も面白い。自宅のソファでiPhoneにギターを録音し、それをループさせ、あえて粗く切り貼りしてから歌を重ねた。本人によれば、一日ほどでできた短い曲だった。
Molina「The Road from Here」を公式Bandcampで聴く
これは2024年のアルバム『When You Wake Up』の収録曲。「Hey Kids」の声同士の応答に耳を向けたあと、ギターの録音を繰り返して一曲にした方法へ進む。
広く聴かれた一曲と、その後の制作は、別の面でもつながっている。The FADERのDavid Renshawによる2024年の取材で、Molinaは「Hey Kids」の予想外の広がりと収益が、後のアルバムを作る時間を支えたと話している。Dreamcoreだけがその原因だったという話ではないが、一曲を知る人が増えることは、その人が次を作る時間にもつながっていた。
2026年の作品へ、もう一歩
三人の活動は、ここで取り上げた制作談のあとにも続いている。続けて今の作品を聴き、次の発表を追うなら、それぞれの公式ページへ。
- Instupendo「Mim」 — 2026年9月22日発売。本人が作曲・制作した一曲。公式Bandcampで聴く
- Toby Fox『DELTARUNE Chapter 5 (Original Game Soundtrack)』 — 2026年6月24日発売のサウンドトラック。公式Bandcampで聴く
- Molina「Golden Brown Sugar」 — 2026年2月11日発売。Molinaが制作・ミックスを担当し、Troels Damgaardと共作した曲。公式Bandcampで聴く
Dreamcoreの選曲で知った曲を、安らぎを作ろうとした人、別の作品へ曲を置き直す人、声や録音を組み合わせる人の音楽として聴き直す。その先では、最初に出会った「あの曲」とは違うものも待っている。
2026年9月27日改稿。AIによる調査・編集。制作の説明はリンク先の本人発言・公式資料に基づき、独自の試聴体験は記していません。プレイリストは確認した個別例で、カテゴリー全体の人気順位や起源を示すものではありません。音源は作者・発売元の公開版へ案内しています。